医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例​​ICU患者の新規房細動リスクを予測するAI

​​ICU患者の新規房細動リスクを予測するAI

ICU患者において新規発症する心房細動は、ICU入院期間の長期化や院内死亡リスクの増加につながることがある。ICU患者の心房細動を予測する機械学習モデルに関する先行研究では、外部検証コホートでの性能が低いことや、日常的に使用しない予測因子が含まれているなど、いくつかの課題が指摘されている。オックスフォードの研究チームは、ICU患者における新規発症心房細動を予測するAIモデル「METRIC-AF」を開発し、外部検証を実施した。

The Lancet Digital Healthに掲載された論文によると、外部検証は2008年から2019年にかけて、イギリスの3つのICUおよび米国の4つのICUに入院した39,084人のうち、ICU入室後7日以内に新たに心房細動を発症した2,797人(7.2%)を対象とした。予測因子として、日常診療から得られる10の変数が選択された(年齢、ICU入室日、心拍数、FiO2、入室中の最大平均血圧、血清尿素濃度、ICU入室中の最大血清尿素濃度、心房性期外収縮の有無、ノルアドレナリン注入速度、中心静脈カテーテルの有無)。従来のロジスティック回帰モデルと比較して、METRIC-AFモデルは優れた識別性能を示した(C統計量:0.812 vs. 0.786)。さらにShapley分析の結果、年齢、FiO2、血清尿素濃度が最も重要な3つの予測因子として特定され、これらを用いてグラフィックツールが開発された。

METRIC-AFモデルは、英国および米国の多施設共同研究データを組み込んでおり、単一施設で開発されたモデルよりも一般化可能性が向上する可能性がある。研究者らは、「本モデルとグラフィックツールは、日常診療で使用される変数に基づいているため、臨床医がベッドサイドで患者の新規発症心房細動リスクを簡便に把握するのに役立つだろう」と述べている。

参照論文:

Development and external validation of a clinical prediction model for new-onset atrial fibrillation in intensive care: a multicentre, retrospective cohort study

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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