ブラックカーボンは大気中のエアロゾル成分の1つであり、地球温暖化促進因子として大きな注目を集めている。このブラックカーボンは、ディーゼルエンジンの排気ガスや石炭の燃焼などから発生するが、実は発がん性をはじめとした深刻な健康影響も指摘されている。今回はAI技術を利用し、サイクリストをブラックカーボンから守ろうとする取り組みを紹介する。
学術誌・Science of The Total Environmentにて今月公表された研究報告によると、ブラジルの道路上でのブラックカーボン濃度をモニタリングし、サイクリストの曝露状況を予測するAIアルゴリズムを構築したという。最も強力な予測因子として示されたものは、1時間あたりの「酷使された車両通行量」であったとのこと。研究チームは、サイクリストの健康を守るため、公共バスの刷新・修繕を求めるとともに、自転車専用レーンの設置による隔離の必要性を訴えている。
先進各国を中心にactive commuting(徒歩・自転車などによる健康的な通勤方法)が取り沙汰されるなか、自転車通勤が逆に健康被害をきたす切実な状況にある地域が存在する。全地球的な環境問題は当然重要だが、個別の健康事例に落とし込んでの積極的な研究実施もまた非常に大きな意味を持っている。