世界各国での感染報告が日々取り沙汰されるコロナウイルスについて、その蔓延防止策を介した「大衆監視の加速」という、全く別側面のリスクも内包することを専門家が指摘している。
米CNBCが報じたところによると、現在中国は、コロナウイルス感染の拡大防止を目的として、多くのテック企業に協力を求めているという。中国内のAI関連企業としては、Megviiが今月初め、北京での体温チェックツールを展開したことを公表した。このシステムにおいては異常体温者の検出と当局への警告が連動して行われる。またSensetimeは、公共の場でマスクを着用していない人を検出するアルゴリズムを開発したことを公表している。さらに、既存のSNSや決済系アプリと連携し、個人の移動状況と必要な検疫期間を把握・コントロールすることも計画される。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの上席研究員を務めるMaya Wang氏は、CNBCの取材に対し「コロナウイルスのアウトブレイクは、中国における大衆監視システムの発展を促進させる兆候があるように見える」と話す。安定性の維持を包括的優先事項として扱う中国政府は、監視・検閲に膨大なリソースを割いてきた。コロナウイルスによってもたらされた公衆衛生上の危機に際し、妥当な理由付けをもった監視体制の強化と維持に繋げていくのか、国際社会からの厳しい目が向けられている。