医療分野においてAIは急速な広がりを見せる。画像診断をはじめとして、ハイリスク者抽出による予防、個別化された治療法選択、高精度な予後予測まで、あらゆる医療のステージにその可能性を強く示しており、多くの医療者は期待と疑念を併せ持って事態を静観している。
最近の報告によると、医療者の90%は「AI技術が患者体験を改善する」と考えているという。一方で、AIには明確な問題点が複数内在し、この概要は権威ある学術誌・JAMA(米国医師会雑誌)が3日報じたインタビュー記事に詳しい。このなかで、Robust AIのCEOであるGary Marcus氏は独自の視点に基づく医療AIの可能性と問題点を指摘する。どれだけ研究デザインに配慮したとしても常に一般化可能性は制限されており、あらゆる場面に有効なAIの構築は現時点で困難であることを主として訴える。データセットにない「特殊なケース」への対応の難しさや、AIが「できないこと」を明確化する手段がない現状にも触れている。
同氏は「問題の解決にAIが投入された時、市民は歓喜の声をあげるが、AIは奇跡的な治療法といった種のものではない」と警鐘を鳴らす。AIの問題点を正確に捉えた上で、この技術をどのように世界に持ち込むか、医学を抜本的に向上させるAIとするには現実的に何が必要かを慎重に考える必要があるだろう。