脳と機械をつなぐBrain-Machine Interface(BMI)技術は近年大きな注目を集めている(特に接続先をコンピュータにとるものはBrain-Computer Interface:BCIと呼称される)。イーロン・マスク氏率いるNeuralink社によって開発されたBCIデバイスは、人を対象とした臨床試験が計画され話題となった(過去記事)。人体がAIと融合したとき、拡張された人類(AI-augmented humans)はどのようなものとなるのか。
スペインに本拠を置く銀行グループBBVAの関連メディアは、人工頭脳学(cybernetics)の専門家で、英コベントリー大学で教授を務めるKevin Warwick氏のインタビューを紹介している。まず動画で示されるのは、重度のパーキンソン病とそれに伴う激しい振戦があり、立ち上がることもままならない患者だ。彼の頭部に埋め込まれたデバイスから神経刺激を加えると振戦は収束し、自分の足で立ち上がり歩き始める。こういった電極の埋め込みによる神経変性疾患への治療は、遠からずごく一般的なものになるとしている。また、BMIは疾患治療に用いられるだけでなく、AIシステムと脳が接続されるのももはや「時間の問題」だという。これは現在医療分野で模索されているような技術適用範囲を大幅に超え、人間の能力を著しくブーストするためのものになるとのこと。
Warwick教授が実現を予測するものには、「完全無欠の記憶」「brain-brain communication(音声言語や身体表現を介さない脳同士の情報交換)」「距離を問題としない身体拡張」から、echolocation(反響定位)に代表されるような「新しい感覚の獲得」までを挙げている。同氏は「”AIによって拡張された人類”というのは、必然的に我々が進むべき道になるだろう」と指摘する。この話を完全な空想と呼ぶには、周辺技術の発達があまりに著しい。近い将来、私たちと私たちが見る世界は、今とは大きく異なったものであるのかもしれない。