米国エネルギー省傘下のアルゴンヌ国立研究所は、X線データを3次元画像として視覚化する新しいフレームワークを開発した。32-CDI-NNと呼ばれるこの新しいフレームワークは、収集データに対して従来よりも大幅に高速な3次元化を実現している。
コヒーレント回折イメージング(CDI)は、超高輝度X線ビームをサンプルに反射させるX線技術で、光線は検出器によってデータとして収集され、画像に変換される。現在の検出器はビームが持つ情報の一部しかキャプチャしていないという限界があり、不足データを埋めるための処理は計算機に依存している。ただし、このプロセスは途方も無い時間を要するケースもあるため、抜本的な解決策が求められてきた。アルゴンヌ国立研究所の研究チームは、不足している情報を考慮せず「オブジェクトと、オブジェクトが生データから直接受ける変化」を認識するようにニューラルネットワークをトレーニングしたという。
3D-CDI-NNの実証試験では、欠落している情報を補うために通常必要とされるよりも少ないデータで画像を再構築できることも確認している。新技術は生物学・医学領域における生体構造に関する3Dイメージング技術を大きく進歩させる可能性を秘める。また、環境に透過するX線により「数ナノメートルのスケール(1ナノメートルは10億分の1メートルに相当)」で材料を観察することができるため、材料科学領域からもコヒーレント回折には熱い視線が注がれている。
研究報告:Rapid 3D nanoscale coherent imaging via physics-aware deep learning
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