医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例医療AIがもたらす影響・問題点乳がんスクリーニングAIは読影医を置き換えられるか?

乳がんスクリーニングAIは読影医を置き換えられるか?

乳がん検診における乳房X線検査(マンモグラフィ)では、AIによるスクリーニングへの期待が高まっている。では、検診において「人間の読影をAIに置き換えるのに足る十分なエビデンス」があるか。英国政府の検診検討委員会(UK National Screening Committee)がウォーリック大学に委託したレビューの結果がこのほど、学術誌 BMJから発表された。

同研究の結論から言うと、乳がん検診におけるAIは「現時点で、臨床現場への導入に必要な質は全く担保されていない」というものだ。レビューには、2010年以降に発表された12件の研究、計131,822人のスクリーニング検査が含まれる。その中で評価された36件のAIシステムのうち、34件は放射線科読影医1人よりも精度が低く、36件全てが読影医2名によるダブルチェックよりも精度が低かった。小規模な研究で有望とされた結果でも、大規模な検証では再現されていないという結論が示されている。

アルゴリズムには常に改良が加えられるため、過去に報告されたAIシステムは研究発表の時点で既に古くなっている可能性もある、と著者らは考察する。しかし、今回のレビューには厳格な研究の組み入れ基準を用い、質を体系的に評価していることから、「AIが乳がんスクリーニングで読影医のダブルチェックを置き換えるだけのエビデンスは現状不十分」という結論は強固なものと主張している。その上で「AIが読影医と競合するのではなく、読影医を補完することでスクリーニングのあり方を再設計する」ことが将来的に有望であるとする。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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