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脳卒中の遠隔治療プログラムが有用性を示す

脳卒中の遠隔治療プログラムについて、米国退役軍人省が資金提供を行った研究の成果がまとめられ、このほどNeurologyから公開された。インディアナ大学などが中心となったこの研究計画では、神経内科医がいない施設において急性期の脳卒中治療を遠隔で行う「VHA National Telestroke Program」の有用性を評価している。

本研究論文によると、このプログラムの導入により、専門医を有する他施設への転院搬送割合が60%減少し、よりタイムリーな脳卒中治療を実現できるようになったとしている。プログラムではモバイルデバイスを利用し、遠隔地の専門医が患者の病状を評価するとともに、現場のスタッフで施行可能な治療計画を提供するというもの。特に脳梗塞の発症早期であれば、血栓を溶解し血流再開を図る「tPA静注療法」が極めて有効であるため、適切な診断と早期の治療開始が患者予後にとって重要となる。実際、本プログラム導入後、各施設における血栓溶解療法の実施率が上昇していることも併せて報告された。

COVID-19のパンデミックに伴い、特に米国都市部の高機能病院では、未だ需要過多による危機的状況が続き、結果的に必要な治療機会を逸する患者が後を立たない。医療資源の効率利用のためには、非専門医および非高機能病院における取り扱い可能事例を増やすこと、不必要な転院搬送を抑制することが求められており、本プログラムは導入メリットの大きい現実的な解決策として多大な注目を集めている。

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