米国におけるAIツール導入の現状

米国において、規制当局による承認済みAI医療機器は急激に増加し、これに伴って臨床現場におけるツールの採用も広がりつつある。

米国大規模医療システムがどのような姿勢を持つかについては、先行研究が参考となる。シカゴ大学などの研究チームがJournal of General Internal Medicineに昨年公開した研究論文によると、大規模医療システムの60%超がAIツールを担当する専門チーム、または専門家個人を有してAIツールの導入・運用・評価にあたっているとする。また今月4日、npj Digital Medicineから公開されたコメンタリー論文によると、調査対象ヘルスケアプロバイダーの半数以上が何らかのAIソリューションを運用し、さらに30%が「今後2年以内に導入予定」とした。

AIツールによるリスク予測領域で特に重要視されているものには入院・再入院リスク予測と敗血症リスク予測が挙げられるが、あるベンダーが提供する「EHRに基づく敗血症予測システム」がアルゴリズムに重大な問題を抱えていること、またこれが厳密な評価を受けることなく多くの医療システムで展開されていることを指摘する論文も公表され、話題を呼んだ。医療AIが実環境で有効に活用されるための道は平坦ではないが、種々の議論が徐々にその土壌を踏み固めていることは間違いない。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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