米国では日没後の自動車走行は全体の25%に及ばないにも関わらず、死亡事故のほぼ半数が夜間に発生している。今後、自律走行がより一般的になることを見据えても、暗闇で有効に機能する「低コスト・省電力な新しい衝突回避システム」が求められていた。
ペンシルベニア州立大学の研究チームは、「イナゴやハエなどの昆虫は、派手なソフトウェアやLiDARに頼らなくても、非常にシンプルな障害物回避神経回路を働かせ、夜間でも簡単にお互いの衝突を回避することができる」点に着目し、効果的で安全、かつ消費電力の少ないアルゴリズムの設計を行った。ACS Nanoに掲載されたチームの研究論文によると、ここでは従来アプローチのように画像全体を処理するのではなく、「車のヘッドライトの明るさ」という単一変数のみに焦点を当てている。また、カメラやイメージセンサーを搭載せず、検出部と処理部を一体化することで、検出器全体の小型化とエネルギー効率の向上を実現した。さらもセンサーは、二硫化モリブデン層からなる8つの受光素子「メムトランジスタ」を回路上に配置したもので、その面積はわずか40マイクロメートル、消費電力は数百ピコジュールと、従来の数万分の一に抑えられている。
実際の夜間走行では、車両が衝突する事故を2~3秒前に検知することができており、ドライバーに十分な猶予を与えることができたという。研究者らは「この新しい検出器は既存の衝突回避システムをより良く、より安全にするのに役立つ」と述べている。
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