シンガポール国立大学ヨンローリン医学部はこのほど、地域密着密着型の先端眼科医療を推進する新センターを設立した。「Centre for Innovation and Precision Eye Health」と呼ばれる新しいセンターは、AIと集団データを活用し、シンガポールで急速に進行する高齢化に対応しようとするもの。
シンガポールは2022年時点で、65歳以上高齢者が人口の18%だが、2012年の11%から急速に増加しており、今後10年間で、高齢者が人口の4分の1を占めるようになることが見込まれる。このような現実を踏まえ、眼疾患を含む慢性疾患の罹患率上昇に対して、地域レベルでの有効な予防医療の展開に国策として力を入れている。現在、シンガポール国内で眼疾患の早期発見が可能なのは高機能な専門機関に限られており、この背景には診断用眼科機器が高価で、廉価で有効なスクリーニング機器と手段が普及していないことも一因となる。
同大の医学部長であるChong Yap Seng教授は、「このセンターは、シンガポールにおける現行のヘルスケアエコシステムを、予防医療を優先するエコシステムに変革するのに役立つ『トランスレーショナルリサーチワーク』の一例だ。特に、シンガポールの人口が急速に高齢化し、より多くの人々が慢性疾患リスクを抱えている中で、眼疾患の早期発見と特定によってこれを実現したい」と語る。エビデンスに基づくイノベーション、AIを駆使したデジタルインフラ、拡張性のあるコミュニティベースのケアモデル活用を通じ、このセンターは、高齢社会における眼科医療の需要拡大に対応しようとしている。
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