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スタンフォード大学病院 – AIアラートを臨床実装

JAMA Internal Medicine誌に発表された研究では、スタンフォード大学病院で使用されているAIベースモデルについて述べている。このアラートシステムは、患者の増悪リスクを常時モニタリングし、ケアチームに警告を送ることができる。

このアルゴリズムは、バイタルサインや電子カルテ情報、検査結果などのデータをほぼリアルタイムで取得し、入院患者の健康状態が悪化するかどうかを予測するモデルとなる。医師は全ての患者のデータポイントを常に監視することはできないので、モデルはバックグラウンドで実行され、約15分ごとにこれらの値を評価する。そして、AIによって増悪リスクスコアを算出し、急激な変化が予測されるケースでは、モデルがケアチームにアラートを送ることができる。

スタンフォード大学病院では、このモデルをワークフローに統合した際、元々は「患者がすでに悪化している時」にアラートを送っていたが、これは実臨床上のメリットに乏しかったという。そこで研究者らは、ICUへの転室やその他の健康悪化指標を予測することに重点を置くよう、モデルを調整した。

約1万人の患者を対象としたこのツール評価では、ハイリスクと判定される963人の患者のうち、ICUへの転室や、緊急対応チームによるイベント、その他の悪化イベント、などが10.4%減少し、臨床転帰が大幅に改善したという。研究チームは「このモデルは、どの患者に特別なケアが必要かを判断するため、医師と看護師が協力することを促すのに特に役に立った」と結論付けている。チームはさらなる精度向上を目指し、モデルの改善に努めている。

参照論文:

Effectiveness of an Artificial Intelligence–Enabled Intervention for Detecting Clinical Deterioration

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