AIによる創薬 – 知的財産権は誰のものに?

創薬、特に新規化合物の探索においては、AIの有用性が日々取り沙汰されている。大手製薬会社やバイオテック企業群からも熱い視線を受けるAI創薬だが、現在の知的財産法の枠組みでは特許の議論が十分でない可能性が指摘されている。

MedCity Newsが2日報じたところによると、Mayer Brown法律事務所が後援するライフサイエンス法シンポジウムのトピックとして、本題が指摘されたという。同シンポジウムは米シートン・ホール大学法科大学院で開催された。ここでは、AI創薬によって生み出された製品に対し、現在の知的財産法の枠組みが権利保護に適さない可能性があるという。このほど、MITが機械学習アルゴリズムによって新規抗生剤ハリシンを導き大きな話題となったが(過去記事)、この化合物は過去に糖尿病の潜在的治療薬として調査された過去を持つ。つまり、既存の糖尿病薬が抗生剤として機能することをAIが発見した場合、誰がどう権利を持つのかに議論の余地が残ることになる。

ソルトレークシティに本拠を置くRecursion Pharmaceuticalsは、機械学習アルゴリズムによって開発した薬剤を既に持つ。また、英オックスフォードのExscientiaはバイエル、サノフィ、大日本住友製薬など複数の製薬会社とパートナーシップを結び、AIを活用した薬剤開発を強力に進めている。急速に発展するAI創薬のもと、技術発達に即応した法的枠組みの在り方が求められている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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