RSNA 2021 – 放射線科におけるAI導入の現状と課題

第107回北米放射線学会(RSNA 2021)は、11月28日から12月2日までの5日間に渡って開催された。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い完全オンラインにて行われたが、本年はイリノイ州シカゴでの現地開催となり、業界を先駆ける新技術や最新研究成果の公表に大きく沸いた。このRSNA 2021のパネルセッションから「放射線科におけるAI導入の現状と課題」についてを取り上げ、ここで紹介したい。

アカデミアおよび産業界のオピニオンリーダー5名が、放射線科におけるAI導入の現状と課題、今後の採用戦略についてを議論した。ここで、シカゴ大学の放射線科教授であるPaul J. Chang氏は、AI導入の現状を「幻滅の谷」と表現している。Chang教授はGartner社のハイプ・サイクルの図を使って解説したが、これは「ハイプがエスカレートした後に幻滅が訪れる」というもの。企業やベンチャーキャピタルの資金は放射線科のAI技術に多量に注がれているが、実際のユーザーとなる医療機関での採用状況は最適とは言えない。Chang教授は「現状我々は、数百万ドルが投じられる様子を日々目の当たりにするが、これらAIシステムの大規模な採用はあまり進んでいない。人々はまだ、水に足を浸しているようなもので、あちこちで幾つかのアルゴリズムをテストしているだけだ」とし、AI導入を加速させるためには、放射線科のリーダーやその他の医療関係者が、「この技術が経済的にも意味のあるものであることを病院幹部に納得させる必要がある」ことを指摘する。

実際、Radiology Partners社の放射線科医でAssociate Chief Medical OfficerのNina Kottler氏は、自身のグループが開発した臨床ワークフローの改善アルゴリズムが、十分に大きな投資収益率(ROI)をもたらしたことを同セッション内で説明している。また、放射線科AIの導入について示唆的であったのは、エモリー大学の放射線科医で、AI研究者でもあるHarvi Trivedi氏のコメントだ。氏は主要な医療機関の意思決定者に対するインタビュー調査によって、明確に「組織がより多くの患者を獲得できるAIアプリケーション」が好まれており、これは「放射線科スタッフの業務効率を改善するアプリケーション」よりも魅力的な投資である、と捉えられていることを明らかにしている。このことは、例えば患者の多くにフォローアップイメージングを促すようなAIアプリケーションは臨床導入が加速し得ることを示唆する。さらに、AI技術の向上に伴い、現場は単一ソリューションを魅力的と感じなくなっていることにも言及し、今後さらなる統合システムの構築を検討する必要があるとしている。

放射線科は他科に先駆けてAI開発の進んだ領域として認知されるが、2021年現在でも有効なシステムの開発と普及には複数の壁があり、プロバイダーと規制当局、現場の模索は続いている。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、現在は米マサチューセッツ総合病院研究員、ハーバードメディカルスクール・インストラクター。他に、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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