先月末、Amazonが医療サブスクリプションサービスを提供する米One Medicalを買収することを明らかにした。総額39億ドルに及ぶ買収劇により、Amazonは70万人を超える同医療サービス会員の健康データに追加的にアクセスすることになる。
本件の発表以降、米国では各方面からの批判と警告が展開された。Open Markets InstituteのBarry Lynn氏は「この買収により、Amazonは個人に関する最も重要な機微情報を収集する能力を拡大し、これまで以上に高度な方法で人々を追跡し、標的とし、操作し、利用できるようになる」と主張している。米国では、HIPAAとして知られる「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律」により、医療提供者と健康保険が患者の同意なしに保護された健康情報を共有することを防止している。モンタナ州選出のJosh Hawley上院議員は、Amazonが「HIPAAの抜け穴」をついて患者データを悪用し得ることを強調している。ただし一方、Amazonは「Amazon Care」を通じて米国人口の大部分と既につながっている事実もあり、One Medicalの買収によって突如として「リスクを伴う情報の取り扱い」に舵を切る動機と必要性が本当にあるのかは不透明だ。
Amazonがヘルスケアにおける存在感を急速に高めていることは明確な事実であり、これによって領域における競争が軟化方向に向かう可能性も否定できない。真のイノベーションに必要な競争を維持することを前提としながらも、Amazonが持ち込むと考えられるAI技術がどう医療の質を変革するのかには、やはり大きな関心を抱かざるを得ない。
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