種々の「AIによる転倒リスク予測モデル」の有用性が検討される中、健常者と比較して転倒リスクが高い下肢切断患者では、これまで十分な研究報告がなされていない事実がある。カナダのOttawa Hospital Research Instituteを中心とした研究チームは、「下肢切断患者の転倒リスクを、6分間歩行テストにおいてスマートフォンの歩行データから自動評価するAI研究」を行っている。
PLOS Digital Healthに掲載された同研究では、80名の下肢切断患者を対象とし、6分間歩行テスト(6MWT)中に腰のベルト位置に付けたスマートフォンから歩行データを取得している。歩行データに基づく機械学習モデルによる転倒リスク分類は先行研究が複数あるが、「下肢切断患者の歩行の変動性と不安定性」は織り込まれておらず、足部の接地パターンに関しては手動によるラベリングの手間を要していた。本研究では、このラベリングを自動化することをコア技術としており、手動ラベリングを用いた際のランダムフォレストモデルによる転倒リスク分類の精度80%に対し、自動化手法でも精度72.5%を達成した。
チームでは本研究の成果から「下肢切断患者の6MWT歩行データにおいても、自動化アプローチで十分に有効な転倒リスク分類が可能である」とし、スマートフォンアプリによる臨床評価が提供できる可能性を指摘している。
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