COVID-19のパンデミックに伴い、世界各国において遠隔医療を巡る規制緩和と、当該マーケットにおける新規プレイヤーの急増を認めた。一方、我が国での「遠隔医療への患者アクセスの公平性」についての報告は非常に限られていた。東京大学で公衆衛生学・医療政策学の研究を行う宮脇敦士助教らの研究チームは、遠隔医療利用と社会経済的要因の関係を調査し、Journal of Medical Internet Researchから結果を報告している。
このほど公開された研究論文によると、18~79歳の研究参加者24,526名において、遠隔医療利用は2020年4月段階における2.0%(497名)から、同年8-9月時点で4.7%(1,159名)と倍増していたという。また、一貫して若年における利用が目立ったが、70歳以上の高齢者における利用割合も、対象期間中に増加していた。さらに、4月時点では観察されなかった「最終学歴が大学の者は、高校以下の者と比較してより遠隔医療を利用する傾向」および「都市部在住者は農村部在住者と比較してより遠隔医療を利用する傾向」が、8-9月時点でみられるようになっていたとのこと。
著者らは「COVID-19パンデミックに伴い、若年者だけでなく高齢者における遠隔医療利用の拡大も進み、必ずしも世代間ギャップは大きくなっていない」として、医療ニーズの大きい高齢者での利用が進むことを前向きに捉える。一方、「学歴と居住地に関する利用格差は拡大した」点を強調し、パンデミックに伴う遠隔医療へのアクセス向上が、不均一に浸透している事実を指摘する。これは「遠隔医療の利用拡大が国民の一部を置き去りとしている可能性」を示唆しており、平等なアクセスを達成するための有効な政策的介入の必要性が明らかとなっている。
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