医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例患者・医療者サポートへのAI活用事例AMPERプロジェクト - 認知症患者の記憶を想起するストーリーテリングAI

AMPERプロジェクト – 認知症患者の記憶を想起するストーリーテリングAI

アルツハイマー病患者の記憶障害は、疾患が進行しても長期記憶へのアクセス自体が必ずしも損なわれるわけではない。記憶障害に対するリハビリテーションは繰り返し思い出させるテクニックに焦点が当てられるが、よりユーザー中心的なアプローチとして、AI主導の「ストーリーテリング(物語を引用し伝達する手法)」によって患者の記憶を表層に戻す手助けをするプロジェクトが進行している。

ヘリオット・ワット大学の主催するNational Robotariumの研究者らは、患者の記憶にアクセスする「親近感のあるストーリー」を作成するAIプロジェクト「Agent-based Memory Prosthesis to Encourage Reminiscing(AMPER)」に取り組む。AMPERのAIコンパニオンが作成するストーリーは、個人特有の人生経験・年齢・社会的背景・ニーズ変化に合わせて、記憶の回想を促す。AIは「世代に関連するマルチメディア資料」と「個人に関連するマルチメディア資料」を整理・再編することで「自伝的記憶」を提供する。自伝的記憶によって個人特有の出来事を追体験させることが、アルツハイマー病患者の価値観・社会帰属意識の回復につながることまでを見込んでいる。

研究を主導するNational RobotariumのRuth Aylett教授は、「記憶の想起を助ける従来のプラットフォームは画一的なアプローチになりがちで、個人特有のニーズに適しているとは言いにくい。我々は患者と介護者に柔軟なソリューションを提供し、自己肯定・社会的受容・自立を感じさせるAIコンパニオンの開発を志している」と語る。

関連記事:

  1. NIH – アルツハイマー病対策のAI研究センター設立へ
  2. アルツハイマー病を予測するウェブアプリ
  3. 語彙パターンによるアルツハイマー病スクリーニング
  4. 「記憶を時系列で整理するための脳メカニズム」を発見
  5. 2年後の認知症診断を正確に予測するAI研究
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事