医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例医療AIがもたらす影響・問題点AIの存在は「医学生が放射線科医を志す」ことを妨げる

AIの存在は「医学生が放射線科医を志す」ことを妨げる

放射線医学領域の専門家らは、多かれ少なかれ医療AIの有効性を認識し、その進展を受け入れる姿勢を示してきた(過去記事)。このほど、全米の医学生を対象としたアンケート調査結果が報告され、「AIの存在は医学生の進路選択に大きな影響を与えている」事実を浮き彫りにしている。

このほどClinical Imaging誌から公開された研究論文では、2020年2月から4月にかけ、全米のメディカルスクールに所属する463名の学生から得たアンケート調査結果に基づき、AIの台頭による進路選択への影響を考察している。これによると、AIの潜在的な影響が無いと仮定した場合、21.4%の学生が放射線科を第一志望としたのに対し、AIについて考慮すると17.7%へと志望者数の有意な下落をみた。また、定量分析により、1. AI自体への懸念 2. 就職機会減少への懸念 3. 放射線科への理解不足 などが、AIの存在によって放射線科を低く評価することと関連していた。

著者らは「キャリアの早い段階でアプローチし、AIを放射線科講義に組み込むことで、不必要な離脱を避けられる可能性」を指摘している。実際、調査結果からも「学生らは進路指導に際したAI教育を重点化するカリキュラム介入」を望んでいるが、現実には世界的にみて未だ萌芽的段階を抜けていない。AIが放射線医学の未来を形作ることに疑いようのない今、適切な人材確保と養成に向けた取り組みが求められている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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