医療とAIのニュース 2024
年間アーカイブ 2024
転移細胞の画像から原発巣を特定するAIアルゴリズム
中国・天津医科大学などの研究チームは、転移細胞の画像を調べることで「原発腫瘍の場所」を特定するAIツールを開発した。研究成果は16日、Nature Medicineから公開されている。
研究者らは、腫瘍の起源が判明している21,000人の腹水や胸水から同定された細胞の画像約30,000枚を用いて、AIモデルを訓練した。その後、27,000枚の画像でモデルを検証したところ、腫瘍の発生源を正確に予測できる確率は83%であった。また、腫瘍の発生源がモデル予測の上位3つに含まれる確率は99%であった。研究者たちはまた、391人の研究参加者のうち、がん治療を受けてから4年後をレトロスペクティブに評価した。その結果、モデルが予測した種類のがん治療(原発巣に応じた治療)を受けた者は、そうでなかった者よりも生存している可能性が高く、生存期間の長いことを明らかにした。これは、臨床の場でAIモデルを使用するための、高い説得力を持つエビデンスとなる。
一部のステルスがんは、発生源から離れた臓器に転移するまで発見されない。研究者らは、体内を循環する転移がん細胞の起源を特定することで、病理医を凌駕し得るAIツールを開発したとしている。この概念実証モデルは、末期がんの診断と治療、生命予後を大きく改善する可能性がある。
参照論文:
Prediction of tumor origin in cancers of unknown primary origin with cytology-based deep learning
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TRIPOD+AI – ヘルスケア研究におけるAI利用を反映する新ガイドライン
臨床的意思決定ツールにおけるAIの普及により、臨床予測モデルを報告するための「TRIPODガイドライン」が更新された。新しい「TRIPOD+AIガイドライン」は16日、BMJ誌で公開された。
TRIPODガイドライン(Transparent Reporting of a Multivariable Prediction Model for Individual Prognosis Or Diagnosis)は、医師が使用する臨床的意思決定ツールを改善するため、2015年に作成された。医療従事者が取り入れることで、意思決定の透明性と正確性が向上し、患者ケアを大幅に改善するのに役立つものだ。一方、2015年以降は特に研究手法が進歩し、AIを用いた予測モデルを開発する研究が加速している。透明性は、健康のためのAI倫理とガバナンスに関するWHOガイダンスを支える6つの基本原則の1つである。したがって、TRIPOD+AIは、モデリング手法に関わらず、「AI予測モデルを開発・評価する研究報告を促進するための枠組みと報告基準」を提供するために開発された。
TRIPOD+AIガイドラインは、英オックスフォード大学の研究者を中心とする国際的な研究者コンソーシアムが、世界中の主要機関の研究者、医療専門家、産業界、規制当局、ジャーナル編集者とともに開発したもの。新しいガイダンスの作成には、AI研究の不十分で不完全な報告を強調する調査、デルファイ調査、オンライン・コンセンサス会議が用いられた。
参照論文:
TRIPOD+AI statement: updated guidance for reporting clinical prediction models that use regression or...
スタンフォード大学病院 – AIアラートを臨床実装
JAMA Internal Medicine誌に発表された研究では、スタンフォード大学病院で使用されているAIベースモデルについて述べている。このアラートシステムは、患者の増悪リスクを常時モニタリングし、ケアチームに警告を送ることができる。
このアルゴリズムは、バイタルサインや電子カルテ情報、検査結果などのデータをほぼリアルタイムで取得し、入院患者の健康状態が悪化するかどうかを予測するモデルとなる。医師は全ての患者のデータポイントを常に監視することはできないので、モデルはバックグラウンドで実行され、約15分ごとにこれらの値を評価する。そして、AIによって増悪リスクスコアを算出し、急激な変化が予測されるケースでは、モデルがケアチームにアラートを送ることができる。
スタンフォード大学病院では、このモデルをワークフローに統合した際、元々は「患者がすでに悪化している時」にアラートを送っていたが、これは実臨床上のメリットに乏しかったという。そこで研究者らは、ICUへの転室やその他の健康悪化指標を予測することに重点を置くよう、モデルを調整した。
約1万人の患者を対象としたこのツール評価では、ハイリスクと判定される963人の患者のうち、ICUへの転室や、緊急対応チームによるイベント、その他の悪化イベント、などが10.4%減少し、臨床転帰が大幅に改善したという。研究チームは「このモデルは、どの患者に特別なケアが必要かを判断するため、医師と看護師が協力することを促すのに特に役に立った」と結論付けている。チームはさらなる精度向上を目指し、モデルの改善に努めている。
参照論文:
Effectiveness of an Artificial Intelligence–Enabled Intervention for Detecting Clinical Deterioration
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Insilico Medicine – AIアプローチによるPTPN2/N1阻害剤の開発
近年、PD-1やそのリガンドであるPD-L1遮断に代表される「がん免疫療法」は目覚ましい進歩を遂げている。しかし、免疫療法薬が新たな治療の可能性を提供する一方、これらの治療に反応する患者は20〜40%程度に過ぎない。大多数は奏効しないか、薬剤耐性を獲得する。研究者たちは現在、より多くの患者に恩恵をもたらすため、がん免疫療法の範囲を拡大する方法を模索している。
方法の1つが、非受容体型チロシンホスファターゼ2型(PTPN2)とその近縁のスーパーファミリーであるPTPN1を介するものだ。これまでの研究で、これらは、腫瘍指向性免疫を減弱させることにより、腫瘍形成を促進する免疫細胞のシグナル伝達経路の制御に関与する「重要な調節因子であること」が同定されている。PTPN2/PTPN1阻害剤の開発は有望ではあるものの、活性部位が陽イオン性であり、タンパク質表面の性質が比較的浅いため、薬物動態が好ましくないという課題に直面していた。
重要なマイルストーンとして、Abbvieの研究者らは、構造ベースの薬物設計と薬物様特性の最適化を通じ、デュアルPTPN2/N1阻害剤ABBV-CLS-484を発見した。現在、AI創薬企業であるInsilico Medicineは、同社のジェネレーティブAIドラッグデザインエンジン「Chemistry42」の支援を受け、薬剤類似性とin vivo経口吸収性を有する新規PTPN2/N1阻害剤をデザインするための高速追従戦略によるプログラムを開始した。この研究は5日付のEuropean Journal of Medicinal Chemistryに掲載された。
研究者らは、参照化合物として既知のPTPN2/N1阻害剤の構造をChemistry42に入力し、リガンドベースのドラッグデザイン戦略に基づいて一連の新規PTPN2/N1阻害剤を生成した。さらに、最も有望な分子を最適化して合成し、望ましいADME特性を持つ候補化合物を得た。Insilicoの化合物は、in vitro試験において、参照化合物と比較し、経口吸収性、全身曝露性が向上し、同等の生物学的活性を示している。さらにInsilicoの化合物は、マウスモデルにおいて参照化合物と同等の有効性を示した。
この研究で最も重要な進歩の1つは、「Chemistry42の高速追従性を検証したこと」であり、これによりユーザーは既存の分子をより望ましい特性に迅速に改良することができる。本論文では、ナノモルの阻害力、良好なin vivo経口バイオアベイラビリティ、強固なin vivo抗腫瘍効果を示す新規PTPN2/PTPN1阻害剤を報告した。現在、さらなる追加研究が進行している。
参照論文:
Synthesis and structure-activity optimization of azepane-containing derivatives as PTPN2/PTPN1 inhibitors
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大動脈弁狭窄症リスクを特定するAIビデオバイオマーカー
6日、JAMA Cardiologyに発表された新しい研究によると、大動脈弁狭窄症を発症または悪化する可能性のある患者を臨床医がより正確に特定するための、AIベースビデオバイオマーカーを開発した。
米イェール大学やUCSFなどの共同研究チームは、大動脈弁狭窄症に対するビデオベースのAIアルゴリズムと疾患の進行との間に関連があるかを評価しようとした。以前の研究でチームは、心臓超音波検査ビデオで大動脈弁狭窄症を示唆する特徴を特定するディープラーニングアプローチを開発している。その結果、ビデオベースのバイオマーカーであるDigital Severity index(DASSi)が、重症の大動脈弁狭窄症の心エコーシグネチャーを正確に同定できることが分かった。
また、今回の研究では、大動脈弁狭窄症を発症していない患者、あるいはベースライン時に大動脈弁狭窄症が軽度あるいは中等度の患者において、DASSiを用いて大動脈弁狭窄症の発症と進行のリスクを層別化できるかどうかを検討した。結果、ベースラインのDASSiが高いほど大動脈弁ピーク速度の進行が速く、DASSiスコアが0.2以上では大動脈弁置換術(AVR)リスクが4~5倍高いことを明らかにしている。
DASSiを用いて同定される映像特徴は臨床医には見えないため、画像モダリティを横断してうまく機能するこのツールの能力は貴重なものとなる。今後研究チームはDASSiの診断能力を検証し、このツールが「重症型に進行する可能性のある軽度あるいは中等度の大動脈弁狭窄症患者にフラグを立てることができるかどうか」をテストすることを予定している。
参照論文:
A Multimodal Video-Based AI Biomarker for Aortic Stenosis Development and Progression
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心臓年齢を予測するAIツール研究
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医療AI企業が直面する「欧米の規制課題」
ここ数年で、医療分野におけるAI利用の研究開発や製品化が相次いでいる。AIツールが臨床環境における一般的ツールとなることは疑いの余地が無いが、欧米における規制上の課題によって、イノベーターの足踏みがみられる現状もある。
欧州において、医療製品の全ては医療機器規制(MDR)とそこに盛り込まれた規範、GDPRの要件、ESGへの配慮など、多数の規制対応を余儀なくされる。また、近い将来、人工知能の規制枠組みに関する提案(EU AI法)に規定されている「高リスクAI技術」に関する全ての具体的な要件を遵守する必要が生まれる。新たな法的ルールが導入されるたび、法律用語の背後にある論理、成文化された規範の根拠、比例性、補完性、既存の政策規定との整合性をさらに詳しく説明することを意図したガイドラインやベストプラクティスが開発される。多くの場合は、これらのガイドラインには倫理的配慮も含まれている。
求めに応じることが、「水準の確保」に繋がるため、避けられないものである一方、真に有用な技術導入の遅れや、時に開発自体が見送られることも起こり得る。実際、規制側も混迷を極めており、現在、欧州委員会のデジタル戦略によって導入されている分野横断的なAI法制は、MDR、IVDR、機械指令などの既存の分野別法制と統合されることを目指しているが、AI主導の医療機器に対する規制遵守要件が重複する場合、「実際にどのように管理されるか」は不透明である。
一方の米国では、AI規制はほとんどの場合、分野横断的ではなく分野別である。主な連邦医療プライバシー法である1996年医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)は、医療保険者、請求処理クリアリングハウス、医療提供者とその業務提携者のような「対象事業体」にのみ適用され、保護される医療情報のサブセットにのみ適用される。米国のアプローチであるセクター主義にはプラスとマイナスがある。プライバシー分野では、欧州の分野横断的アプローチは、伝統的なヘルスケアの境界を越えて規制しているため、ウェアラブルやインターネット検索などから得られる健康データなど、「伝統的な医療に隣接する空間での運用」に適していることが、明確な利点となる。しかし、異なる分野の経済的現実があること、その分野には既存の法体系があり、その法体系がすでに仕事の一部を担っている可能性があるという事実が、必ずしも考慮されているとは限らない。
規制を巡る新たな課題は、変化のテンポにどれだけ適合するかということだ。生成AIの台頭は、その典型的な例である。EUのAI法は、Open AIのChatGPTのような生成AIシステムの躍進が明白になった時、同法の下でこれらの基盤モデルをどのように規制するかについての意見の相違や、異なる基盤モデルがどの程度同法に準拠しているかについての疑問が生じた。医療におけるAIは急速に進展している。AIが信頼に足る責任ある方法で開発され、使用されることを保証するためには、AI法のような一般的で包括的な規制は、すぐに時代遅れとなり得る。世界では、事前に訓練された応用的・生成的なAIモデルから、強化学習や転移学習をベースとした対話的でマルチモーダルなAIモデルへと、指数関数的なスピードで移行しつつある。これらのAIモデルは、ラベル付けされたデータ・コーパスも、人間のフィードバックも、訓練・テスト・検証データセットも必要としない。規制当局は、技術革新のテンポが高速化していることを認識し、この破壊的な技術を真に理解し、遅れをとらないよう努める必要が生じている。
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2024年の米国における医療AI事情
医療進出を加速させるNVIDIA
NVIDIAは先週のGTC 2024で、ヘルスケアに特化した薬20のAIツールを発表している。また、Johnson & JohnsonやGE Healthcareとの新たな取り組みも明らかにした。
GPUの業界最大手にしてAI開発のトップリーダーである同社は、医療が今後の主要な収益機会になることを強く認識している。ここ1年半ほどの間に、AIが製薬業界、医療技術業界、バイオテクノロジー業界でどのように役立つか、具体的な成果や説得力のある使用事例が示されてきた。実際、NVIDIAの株価は年初来で100%近く上昇している。
特に医薬品開発は、コンセプトから臨床試験まで少なくとも10年はかかるリスキーなプロセスであるため、これを効率化するAIへの期待は大きい。昨年、NVIDIAは創薬プロジェクトのため、Recursionに5000万ドルを投資した。Recursionは、同社のクラウドプラットフォーム上でNVIDIAのAIモデルをトレーニングするために、生物学的および化学的データを入力している。同社はまた、RocheのGenentechとも協力し、新薬やより優れた治療プロトコルを開発している。
NVIDIAはJohnson & Johnsonと「外科手術における生成AIの活用」について、GE Healthcareとは「医療用画像の改善」に関しての契約を発表した。医療進出を加速させる一方で、AIの利点を最大化するためには医療分野で働く現場労働者からの理解を得ることも欠かせない。EYが提供する「AI Anxiety in Business Surevey」によると、同領域の労働者の3分の2以上がAIの利用に懸念を抱いており、10人中7人が職場でのAI導入に不安を感じているという。NVIDIAが今後医療において果たす役割に大きな注目が集まる。
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公正な臨床AIに必要となる「多職種連携」
AIが放射線科医に与える影響 – AIの個別化利用戦略
米ハーバードメディカルスクール、マサチューセッツ総合病院、スタンフォード大学などの研究チームは、AIベースの読影支援ツールの使用が、放射線科医のパフォーマンスに与える影響を評価した。研究成果はこのほど、Nature Medicineから公開されている。
研究チームは、15の胸部レントゲン写真読影タスクについて、140人の放射線科医におけるAI支援効果を調査した。驚くべきことに、経験年数やサブスペシャリティ、AIツールへの習熟といった従来の経験に基づく要因は、AI支援による影響を確実に予測することはできなかった。さらに、実績の乏しい放射線科医ほどAI支援による恩恵を一貫して受けておらず、これは一般的な仮定(「臨床経験の浅い医師ほどAI支援によってパフォーマンスが向上する」)を覆すものであった。むしろ、AIエラーの発生が結果に強く影響しており、不正確なAI予測が放射線科医のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことを明らかにした。
研究チームは、臨床医とAIの連携における個別化アプローチの重要性と、正確なAIモデルの重要性を浮き彫りにした。AI支援の有効性を形成する要因を理解することで、本研究はAIの的を絞った導入のための貴重な洞察を提供しており、臨床現場において個々の臨床医に最大限の利益をもたらす戦略を示唆している。
参照論文:
Heterogeneity and predictors of the effects of AI assistance on radiologists
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機械学習研究 – 1日の歩数が健康を規定する
このほどBritish Journal of Sports Medicineに掲載された研究論文では、「1日の歩数が心血管疾患(CVD)の発症、および死亡率に影響する程度」をウェアラブルデバイスを用いた大規模試験によって明らかにしている。
最終的に7万人以上となった研究対象者は、毎日16時間以上を3日以上に渡って、手首にウェアラブルデバイスを装着して身体活動が評価され、ここでは加速度計ベースの機械学習モデルを用いて分類が行われた。その後のCVD発症や死亡の追跡の他、多面的な交絡因子を測定している。結果、1日4,000歩未満は5.4%の粗死亡リスクを示した一方、1日8,000歩を超える歩数では粗死亡リスクは3.1%と低値を示した。また、新規発症のCVDに関しても量反応関係が観察され、歩数が増えるごとに発症リスクが低減していた。
本研究では、特に「座りがちな人が1日の歩数を増やすことの重要性」を強調しており、死亡率とCVDリスクをともに減少させる最適な歩数は「1日9,000~10,500歩である」と結論付けている。
参照論文:
Do the associations of daily steps with mortality and incident cardiovascular disease differ by sedentary time levels? A device-based cohort...
車載センシングシステムによる「高齢ドライバーの認知機能低下検知」
米国では現在、軽度認知障害のある高齢者が400~800万人いると推定され、そのうち3分の1が5年以内に認知症の発症に至る。認知症は安全な運転を難しくするが、認知機能低下を自覚していないドライバーも多い。
BMC Geriatricsにこのほど掲載されたプロトコル論文では、フロリダ・アトランティック大学の看護学、工学、神経心理学の研究者たちによる、同グループが開発した容易かつ迅速に利用可能な、目立たない車載センシングシステムの試験・評価のためのスタディプロトコルを公開した。運転行動と認知機能に関する継続的な情報を得るため、縦断的デザインとして3年間、3ヵ月ごとに広範な認知テストを行う。また、運転席カメラ、前方カメラ、テレマティクス・ユニット(TCU)が車両に設置され、認知テストが実施される3カ月ごとにデータがダウンロードされる。研究者たちは、道に迷う、信号や標識を無視する、衝突しそうになる、注意散漫や眠気、反応時間、ブレーキパターンなどの異常運転を測定するとともに、移動回数、走行距離、高速道路走行距離、夜間・昼間の走行距離、悪天候時の運転など、移動パターンも調べるとしている。ドライバーに向けたカメラ映像とAI技術により、顔検出、視線検出(開閉)、あくび、注意散漫、喫煙、携帯電話の使用なども測定される。
このシステムが「認知機能障害を示す異常な運転行動をどのように検出できるか」を系統的に検証する。非常に複雑な日常動作の時間経過に伴う微妙な変動を検出するための、連続的で目立たないセンサーや関連するモニタリング装置の使用について報告した研究はほとんどないため、認知機能低下検出における未知の成果を得ることが期待されている。なお、本研究は、米国立衛生研究所(National Institutes of Health)、老化研究所(National Institute on Aging)からの助成金(1R01AG068472)によって実施される。
参照論文:
Study protocol for “In-vehicle sensors to detect changes in cognition of older drivers”
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All of Usから新たに2億を超える遺伝子変異
多様な個人における「疾患の遺伝的基盤を包括的にマッピングすること」は、遺伝学分野の長年の目標だった。「All of Us Research Program」は、生物医学研究を加速させ、人々の健康を改善するために、米国全土の少なくとも100万人の多様な集団を登録することを目的とした、縦断的コホート研究として知られる。
このほどNature誌に掲載された研究論文では、All of Us Research Programデータセットから、これまで報告されていなかった2億7500万以上の遺伝子変異を同定したことを報告している。All of Usリソースはその多様性においてユニークなものであり、参加者の77%は生物医学研究において歴史的に十分な取り扱いがみられなかったコミュニティ出身者であり、46%は十分な取り扱いがなされていない人種的・民族的マイノリティ出身者となる。All of Usは10億以上の遺伝的変異を同定し、その中には2億7500万以上の未報告の遺伝的変異が含まれた。ゲノムデータと縦断的な電子カルテとのリンケージを活用し、117の疾患と関連する3,724の遺伝子変異を評価し、ヨーロッパ人の祖先を持つ参加者とアフリカ人の祖先を持つ参加者の両方で高い再現率を示した。
これまでの大規模ゲノム研究の参加者の90%以上がヨーロッパ人の祖先を持つ人々であり、AIアルゴリズム開発を含む精密医療における健康の公平性を巡る重大な懸念につながっている。All of Usでは、サマリーレベルのデータは一般に公開されており、個人レベルのデータはAll of Us Researcher Workbenchを通じて研究者がアクセスすることができる。All of Usは医学研究への参加機会を促進し、医学研究に対する認識向上とアクセスの改善を実現するものとして期待されている。
参照論文:
Genomic data in the...
網膜眼底画像によるパーキンソン病スクリーニング
パーキンソン病は、脳黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの進行性喪失により、運動制御が次第に困難となる。パーキンソン病に関連した死亡は2000年以降2倍以上に増加しており、その主要な原因は高齢者における「適時での質の高い介入」の欠如が挙げられている。
このほどScientific Reportsから公開された研究論文では、ディープラーニングにより、網膜眼底画像からパーキンソン病をスクリーニングできる可能性を指摘している。パーキンソン病に対する網膜バイオマーカーを深く理解するためには、網膜血管系の構造的変性に関する十分な知識が必要となる。これを臨床的に実施することはしばしば困難であるが、AIは網膜の局所的および大域的な空間レベルでの複雑な関係の解明に役立つ可能性がある。本研究は、前述の課題に対処するためにAIアルゴリズムの使用を提案するもので、「眼底画像からPDを診断するための最初の大規模AI研究の1つである」としている。
特徴選択法や外部の定量的尺度を一切無視することで、研究者らはAIアルゴリズムの診断能力を最大化した。ディープニューラルネットワークは、従来の機械学習モデルを凌駕し、網膜眼底画像におけるパーキンソン病の検出において顕著な性能を示した。このモデルは、0年から5.07年までの間、80%の感度で正式診断前のパーキンソン病発症率を予測することに成功した。また、5.07年から5.57年の間に感度は93.33%まで上昇し、5.57年から7.38年の間に81.67%まで低下した。これらの結果は、早期疾患介入の可能性を示すものとして有望と言える。チームでは、実臨床現場におけるAIモデルの信頼性を確立するため、多様なサンプルを用いた追加研究を模索している。
参照論文:
Deep learning predicts prevalent and incident Parkinson's disease from UK Biobank fundus imaging
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2024年の米国における医療AI事情
米国の医療機器規制当局にあたる米食品医薬品局(FDA)は、既に692のAI製品を承認している。アルゴリズムは、患者のスケジューリングや緊急治療室における人員配置の決定、医師の時間節約に資する臨床診察の書き起こしや要約、また、放射線科医が種々の画像を読影することにも役立っている。
同領域に関する米国での投資もその規模を大きく維持している。ベンチャーキャピタルのRock Healthによると、金融機関は「AIを専門とするデジタルヘルス企業」に280億ドル近くを投資しているという。一方で、規制当局が頭を悩ませている問題の1つは、5年後も現在と同じ化学的性質を持つ医薬品とは異なり、「AIは時間とともに変化すること」にある。ホワイトハウスや複数の有力医療機関群が中心となり、透明性とプライバシーを確保するための規則を策定するなど、ガバナンスは形成されつつある。議会も医療AIに強い関心を寄せており、上院財政委員会は2月8日、ヘルスケアにおけるAIに関する公聴会を開催した。
規制や法整備に伴い、ロビー活動も活発化している。CNBCは、「2023年にAIのロビー活動を公開する組織数が185%急増した」としている。業界団体のTechNetは、AIの利点を視聴者に伝えるため、テレビ広告の購入を含む2500万ドルのイニシアチブを開始した。2024年も、AIは医療におけるホットトピックの1つであり続ける。
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肺がんスクリーニングを革新するAI
肺がんは、「診断の遅れによる死亡率」が高い世界的な健康課題である。早期発見のための技術にはコンピュータ断層撮影(CT)が含まれるが、良性病変や放射線科医の経験がパフォーマンスに影響する。予後と生存率を改善するためには、革新的な戦略が必要である。AIモデルは、精度と効率を高め、偽陽性・偽陰性を減らし、既存の技術を補完する技術を提供することで、これらのアプローチを改善する可能性が注目される。
Cancersにこのほど掲載されたメタアナリシス論文では、肺がん早期発見におけるAIモデルの有効性を評価し、診断精度向上の可能性を強調するとともに、従来の手法に対する長所、限界、比較優位性を分析した。研究チームは、PubMed、Science Direct、Embase、Google Scholarの各データベースを検索し、2023年10月までに英語で発表された関連論文を検索した。1,024件の対象論文のうち、適格性を満たしたのは39件で、メタアナリシスによる感度0.87、特異度0.87が示されている。本研究ではAIモデル、特にリカレントニューラルネットワーク(RNN)と畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が肺がん予測精度を向上させ、偽陽性を減少させるとともに、欠損データの影響を低下させるとしている。また、対象集団やデータソース、モデルの仕様の違いによる異質性を観察したところ、患者選択と指標検査、参照基準におけるバイアスリスクは低いが、フローとタイミングにおけるバイアスリスクは高いことを明らかにした。
研究結果は、AIモデルが初期の肺がんを効果的に検出し、陽性と陰性を識別し、予後を改善することを示唆している。一方、研究における不均一性は、標準化されたプロトコルの必要性を強調する。今後の研究では、肺がん検診におけるAIシステムのガイドラインとスタンダードを確立するため、AIモデルを改良するとともに、課題を検討し、研究者、臨床医、政策立案者と協力することに焦点を当てるべきであることに言及している。
参照論文:
AI-Driven Models for Diagnosing and Predicting Outcomes in Lung Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis
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ソーシャルメディア利用と慢性炎症の関係
炎症は急性と慢性の2種に大別できる。外傷や感染に伴う急性炎症とは別に、慢性炎症はストレスや孤独、不適切な食事、運動不足、睡眠不足などで引き起こされることが知られ、心血管疾患、がん、糖尿病、メンタルヘルス問題との関連が指摘されている。米バッファロー大学の研究チームは、ソーシャルメディア利用(SMU: Social Media Use)と慢性炎症の関連に焦点を当てた研究を行っている。
Journal of Medical Internet Researchに発表された同研究では、若年成人が、FacebookやInstagram、Snapchat、X(旧Twitter)といった4つのソーシャルメディアプラットフォームを利用した5週間のスクリーンタイムを、SMUの客観的指標としてアプリで測定した。さらに、炎症レベルを血中のバイオマーカー「C反応性蛋白(CRP)」の変動で分析した。その結果、客観的SMUの増加とCRPレベルの上昇に正の相関があることが示されている。先行研究においてもSMUと炎症の関連は示唆されていたが、人々の記憶を頼りにした調査ではSMUを正確に捉えられず、正確な把握に限界があった。今回の研究では、スクリーンタイムアプリと血中バイオマーカーを用いたことで、より信頼性の高い研究デザインを実現した。
筆頭著者のDavid Lee博士は、「以前の研究では、SMUが炎症を引き起こしているのか、炎症がSMUを促進しているのか分からなかった。今回の研究により、SMUが炎症レベル上昇を予測すること、そして時間経過による因果の方向を確立できた」と述べている。現時点では、被験者における炎症レベル上昇が健康問題として顕在化していないものの、今後の研究により、ソーシャルメディア利用の潜在的な健康影響を深く理解することを、プロジェクトでは目標としている。
参照論文:
Social Media Use and Its Concurrent and Subsequent Relation to a Biological Marker of Inflammation: Short-Term...
卵巣がん早期発見のための個別化アプローチ
米ジョージア工科大学・統合がん研究センター(ICRC)の科学者たちは、機械学習と血液中の代謝産物に関する情報を組み合わせることで、93%という高い精度で卵巣がんを検出できる新しい検査アプローチを開発した。研究成果はこのほど、Gynecologic Oncologyからオンライン公開されている。
卵巣がんは、発症早期は無症状であることが多く、治療が困難となる発症後期まで発見されないことから、サイレントキラーの一種とされる。末期卵巣がん患者の平均5年生存率は、治療後でも30%程度に留まるが、卵巣がんを早期に発見し治療した場合、平均5年生存率は90%以上となる。研究者らは、メタボローム・プロファイルと機械学習ベースの分類法を組み合わせた統合的アプローチを開発した。特徴的であるのは、個々の代謝産物の正確な化学組成を知らなくても、質量分析によって検出された「異なる個人の血液中の異なる代謝産物の存在」だけでも、正確な機械学習ベースの予測モデル構築に特徴として組み込むことができるという知見を活用する点だ。血液中には数千もの代謝産物が循環するが、これらを質量分析によって容易かつ正確に検出し、機械学習と組み合わせることで高精度な予測モデルを達成した。検証は、ジョージア州、ノースカロライナ州、フィラデルフィア、カナダ西部の女性564人を対象に行われた。
研究チームは、この検査が「臨床症状を示さない女性の超早期病変を検出できる可能性」があるとしており、さらなる研究継続を明らかにしている。
参照論文:
A personalized probabilistic approach to ovarian cancer diagnostics
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AI技術による免疫療法の革新 – 米クリーブランドクリニックとIBMの連携戦略
がん免疫療法研究は、「正確な抗原の識別と攻撃方法の探索」という膨大な作業量が課題となる。免疫系が標的をどう認識するかは非常に複雑で変数が多いため、従来の解析手法では時間がかかる上に不正確なこともある。米クリーブランドクリニックとIBMの研究チームは、AIモデルを利用し、免疫細胞が用いるペプチド抗原の分子特性を特定する新しいアプローチを開発した。
Briefings in Bioinformaticsに発表された同研究では、AIモデルを用いて分子の形状が時間と共にどう変化するかを解析し、免疫系が標的抗原を認識するメカニズムを正確に描写できることを示している。このモデルにより、免疫療法の開発者らは、ワクチンや免疫細胞が標的とする重要なプロセスにのみ焦点を合わせることができる。
プロジェクトメンバーで筆頭著者であるIBMのJeff Weber博士は、「この発見は、IBMの先進的な計算リソースと、クリーブランドクリニックの医療専門知識を組み合わせたパートナーシップの成功例だ。がん免疫療法、物理学、AI、あらゆる分野の専門家とのコラボレーションは、技術イノベーションを促進する大きな可能性を秘めている」と述べた。
参照論文:
Unsupervised and supervised AI on molecular dynamics simulations reveals complex characteristics of HLA-A2-peptide immunogenicity
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DermaSensor – 皮膚がんの自動評価AIツールでFDA承認
皮膚がんは、米国で5人に1人が70歳までに経験するとされ、米国内での治療費は年間81億ドルにも上る。早期発見によってほとんどの症例が根治可能であるため、プライマリケア医による早期発見と、専門医への適切な紹介が重要となる。米DermaSensor社は、皮膚がんリスクを非侵襲的にチェックするAI医療機器を開発している。
DermaSensorは、同社の皮膚がん評価システムがFDAの承認を受けたことを発表した。携帯型のワイヤレスデバイスに搭載されたAIベースの分光技術は、皮膚がんが疑われる病変に対し、リアルタイムでその皮膚がんリスクを判定する。FDA承認における主要な臨床研究として、米メイヨークリニックが主導した22施設1,000名以上を対象とした性能検証では、224件の皮膚がんに対して装置の感度は96%に達している。
DermaSensor CEOのCody Simmons氏は、「プライマリケア医が米国医師の最大多数を占めることを考えれば、最も一般的ながんの一つである皮膚がんを彼らが適切に評価できるようにすることには、巨大なニーズがあった。皮膚がん疑い病変の自動評価AI機器として初めてのFDA承認を受けたことを光栄に思う」と述べた。
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WHO – 医療AIが貧困国にとって危険な可能性を指摘
医療におけるAI活用が急速に広がっており、世界保健機関(WHO)はこのほど、倫理的な使用に関する新たなガイドラインを公表した。この中でWHOは、AIに基づくヘルスケア技術の導入は、低所得国の人々にとって危険である可能性にも言及している。
WHOは、大規模マルチモーダルモデル(LMM)に関する新たなガイドラインを記載した報告書を公表し、発展途上にあるテクノロジーの利用が「テクノロジー企業や裕福な国の人々によってのみ形成されることのないようにすること」が不可欠であると述べた。もしモデルが、恵まれない地域の人々のデータでも適切にトレーニングされなければ、そのような人々はAIによって十分な恩恵を受けられないかもしれない、とする。WHOのデジタルヘルス&イノベーション担当ディレクターであるAlain Labrique氏は、「テクノロジーの飛躍的進歩の一環として、世界各国の社会構造における不公平や偏見を伝播させたり、増幅させたりするようなことは、最も避けたいことだ」と述べている。
WHOは2021年に、医療におけるAIに関する最初のガイドラインを発表した。しかしWHOは、その後3年も経たないうちに、LMMの性能と利用可能性の上昇によって、ガイドラインの更新を促された形となる。生成AIとして知られる技術の急速な広がりは、公衆衛生を損う技術ではなく、保護・促進するための技術として利用されるべきとする当局の意向が色濃く反映されている。
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UCLA「MOVER」 – AI研究推進のための大規模手術室データベースを公開
「AI技術の臨床現場への幅広い進展」を困難にしている主な要因として、公開されている臨床データの不足とAIアルゴリズムの透明性の欠如が挙がる。それらのギャップを埋めるため、米カリフォルニア大学(UC)アーバイン校医療センターでは、手術室に関する大規模な臨床データベース「MOVER」の公開を進めている。
MOVERデータベースに関する詳細は、JAMIA Openに発表された。2012年から開発が進められたこのデータベースには、UCアーバイン校医療センターで行われた手術患者データが、7年間に渡って集積されている。データには、電子カルテ記録や各種モニターから得られた患者の生理機能、手術の詳細、使用された薬剤、手術中のラインやドレーンの使用、術後合併症などの情報が含まれており、83,500件の手術に関する、59,000人に及ぶ患者データが含まれる。患者のプライバシーは、個人情報が特定されないようにするための様々な匿名化プロセスを経て厳格に保護されている。
プロジェクトの責任者であるMaxime Cannesson氏は、「MOVERのように幅広い種類の手術データを含むデータベースが公開されるのはこれが初めてだ。これまで、研究者たちは生理波形を含む大量のデータベースにアクセスすることはできなかった。このデータベースは周術期の外科コミュニティ全体にとって有益であり、AIベースのモデル開発に対する信頼性を高めることが最終的な目標だ」と述べた。
参照論文:
Medical Informatics Operating Room Vitals and Events Repository (MOVER): a public-access operating room database
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BioTrace – 肝腫瘍アブレーション時の超音波検査をAIで精密化
肝臓がん治療において低侵襲な焼灼療法(アブレーション)が普及している。この治療では超音波画像によりマイクロ波で焼灼すべき領域を推定するが、治療後の組織損傷の評価は容易ではなく、過剰治療あるいは過小治療が課題となっている。
イスラエル発のTechsomed社は、この課題に対応するAIソフトウェア「BioTraceIO」を開発した。BioTraceIOは、超音波画像データからアブレーションの基準範囲を独自のアルゴリズムによってリアルタイムで計算し、治療後の経時的な変化を予測することで治療範囲の有効性・安定性を高める。新医療機器としての市場導入を見据え、米国食品医薬品局(FDA)から「De Novo クリアランス」を取得したことも同社は発表している。
50名の患者を対象とした米国内多施設共同試験により、BioTraceIOの性能は検証されている。この試験では、焼灼範囲の24時間後の推定において、造影CTスキャンを上回る有効な結果が得られた。臨床試験を担任する、米UHクリーブランドメディカルセンターのNami Azar氏は、「超音波検査は、リアルタイムの可視化として費用効率が高く、患者にとって優しい選択肢だ。BioTraceIOで可視化を強化し、焼灼の反応を継続的にモニタリングすることで新たな可能性を開く」と語っている。
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Google – 医療面接のためのAIベース診断対話システム
Google ResearchとGoogle DeepMind のAI研究者チームは、医療面接を行うための「AIベース診断対話システム」を開発している。初期の研究成果がこのほど、arXivにプレプリント論文として公開された。特徴となるのは、自動フィードバック機構による「反復的な自己改善プロセス」を有していることとなる。
Articulate Medical Intelligence Explorer(AMIE)は、診断対話に最適化された会話型医療AIである。研究論文によると、様々な医療コンテキストや専門分野に渡ってAMIEの機能を拡張するため、自動フィードバック機構を備えたセルフプレイベースの模擬対話環境を設計した。具体的には、この反復的な自己改善プロセスは、次の2つの自己再生ループで構成される。1. AMIEがコンテキスト内の批判者フィードバックを活用し、AI患者エージェントとの模擬会話での動作を改善する「内側」の自己再生ループ、2. 改善された模擬対話のセットを後続の微調整反復に組み込む「外側」の自己再生ループ。オンラインでの推論の間、AMIEは推論の連鎖戦略を使用し、現在の会話を条件として応答を徐々に洗練させ、各対話ターンにおいて患者に対する正確で根拠のある返答を導き出すことができる。
盲検化試験において、AMIEはプライマリケア医を上回る高評価を確認している。Googleは、AMIEが「純粋に実験的なものであること」を指摘しているが、将来的な臨床利用を見据え、さらなる実環境での検証と性能向上に取り組む。
参照論文(プレプリント):
Towards Conversational Diagnostic AI
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COVID-19診断の自動化を支援する胸部X線判読AI
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査には、時間とコストがかかり、偽陰性の可能性も課題となっている。また、診断を補助するCTやX線検査には人員の不足がエラーの一因となる。それらリソースの不足する地域のためにも、COVID-19を検出する自動化ツールの整備が待望されている。豪シドニー工科大学(UTS)の研究チームは、胸部X線を用い、COVID-19を98%以上の高い精度で迅速に検出するAIシステムを開発した。
Scientific Reportsに発表された同研究では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)ベースのアルゴリズムを採用し、COVID-19、正常な肺、及び他の肺炎を正確に識別することを目指した。手法の改善により、新しいCustom-CNNモデルは、既存のAI診断モデルに対する優位性が確認され、98.19%の分類精度を達成している。
著者でUTSデータサイエンス研究所のGandomi教授は、「新しいAIシステムは、放射線科の人員が不足し、COVID-19の多発する国では特に有益だ。胸部X線は持ち運びやすく、広汎に利用でき、CTより放射線被曝が少ない。この技術は、診断で重要な役割を担う放射線科医に対し、正確で効率的な診断を支援できる」と述べた。
参照論文:
Auto-detection of the coronavirus disease by using deep convolutional neural networks and X-ray photographs
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生物が持つ学習効率の秘密を明らかに
英オックスフォード大学などの研究チームは、「学習時に脳がニューロン間の結合を調整する仕組み」を明らかにした。この新たな洞察は、脳ネットワークにおける学習に関する将来研究の指針となり得、さらに高速で頑健な学習アルゴリズムを導く可能性がある。
生物が持つ脳は、現在の機械学習システムよりも優れている面がある。例えば、我々は新しい情報を一度見るだけで学習できるが、AIシステムは同じ情報を何百回も学習させる必要がある。さらに、我々は既に持っている知識を維持したまま新しい情報を学ぶことができるが、人工ニューラルネットワークで新しい情報を学ぶと、既存の知識に干渉し、急速に劣化してしまうことがある。研究チームは、ニューロンの挙動とニューロン間のシナプス結合の変化を記述する、数学的モデルを調査した。そして、これらの情報処理モデルを分析、シミュレートした結果、人工ニューラルネットワークとは根本的に異なる学習原理を採用していることを明らかにした。
人工ニューラルネットワークでは、外部アルゴリズムがエラーを減らすためにシナプス結合を修正しようとするのに対し、人間の脳はシナプス結合を調整する前に、まずニューロンの活動を「最適にバランスの取れた構成」に落ち着かせることを提案している。Nature Neuroscienceに掲載された研究論文では、この新しい学習原理を「prospective configuration」と名付けている。研究者らはコンピューター・シミュレーションにより、このprospective configurationを採用したモデルは、自然界で動物や人間が通常直面する課題において、人工ニューラルネットワークよりも速く、より効果的に学習できることを示した。今後、prospective configurationを高速かつ少ないエネルギー消費で実行できるような、新しいタイプのコンピューターや、脳から着想を得た専用ハードウェアの開発に至る可能性がある。
参照論文:
Inferring neural activity before plasticity as a foundation for learning beyond backpropagation
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AIは糖尿病性眼疾患の進行を予測できるか?
Nature Medicine誌にこのほど掲載された研究において、中国の研究者らは、眼底画像を用いて糖尿病網膜症の進行を予測する「DeepDR Plus」と名付けられたディープラーニングシステムを開発した。このシステムは、5年以内の糖尿病網膜症の進行リスクと進行までの時間を予測できるとしており、個々人に合わせたスクリーニングと治療戦略策定への道を開いている。
DeepDR Plusは、上海統合糖尿病予防ケアシステムおよび上海糖尿病予防プログラムに登録された、179,327人の糖尿病患者から得られた717,308枚の眼底画像に基づきトレーニングされている。内部検証では、低解像度の画像を用いたにも関わらず、本モデルは既存のメタデータモデルよりも優れた性能を示していた。また、本モデルは8つの外部データセットにおいて、いずれも頑健な性能を維持し、糖尿病網膜症の進行までの具体的な時間を高精度に予測できることを実証している。
極めて有望な研究成果の一方で、DeepDR Plusのトレーニングが中国人集団で行われたこと、内在的バイアスの可能性、治療レジメンの違いによる性能のばらつき、実際の臨床応用がないことなどから、本研究には一定の限界がある。今後の追加的検証に大きな期待が集まっている。
参照論文:
A deep learning system for predicting time to progression of diabetic retinopathy
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Lark Health –...
右心機能評価を革新する心電図AI解析
心臓の右室機能の重要指標である「右室駆出率」や「右室拡張末期容積」を正確に定量する検査ツールは、心臓MRIなど一般臨床的には利用しにくい方法に限られ、時間やリソース上の制約がある。米マウントサイナイ医科大学の研究チームは、心電図にAI解析を組み合わせ、世界的に広く利用可能な右室機能評価手法の確立を目指している。
Journal of the American Heart Associationに発表された同研究では、UKバイオバンクの大規模データから心臓MRIのデータセットを用い、深層学習ベースの心電図解析モデルをトレーニングした。その結果、右室機能不全の正確な評価と臨床転帰との関連を示すことができたとする。
著者のAkhil Vaid医師は、「本研究により、他の一般的な検査では容易に定量化できない右室の機能を予測できるようになった」と述べている。研究チームは、このアプローチが、特に先天性疾患患者など右室機能に問題を抱える患者にとって重要な意味を持つとして、肺高血圧症や様々な心筋症などに対する臨床的有用性の確認を目指し、外部検証を行っていく予定だ。
参照論文:
Quantitative Prediction of Right Ventricular Size and Function From the ECG
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iStar – がん病理診断の精密化を革新するAIツール
米ペンシルベニア大学医学部のチームが開発したAIツール「iStar(Inferring Super-Resolution Tissue Architecture)」は、がんの精密病理診断に画期的な進歩をもたらすことが期待されている。このツールは、病理標本から得られる遺伝子活性の情報を予測し、がん手術における切除範囲の迅速診断や、がん免疫療法への治療反応予測を可能にする。
Nature Biotechnologyに発表された同研究では、「空間トランスクリプトミクス(Spatial transcriptomics)」という、組織の位置と構造に紐付いた情報から遺伝子の活性を測定する新たな解析手法を基盤として、iStarを開発している。特に、がんの辺縁に現れる免疫細胞の集合体「三次リンパ様構造(tertiary lymphoid structures)」に着目し、患者の治療反応や予後を予測する新たなバイオマーカーとして捉えている。
iStarの特筆すべき点はその速度にある。使用した乳がんデータセットに、iStarはわずか9分間で解析を完了しており、最も優れた競合ツールでも同様の解析に32時間以上を費やしたことから、その圧倒的な迅速性を強調する。研究を率いるMingyao Li博士は、「iStarのスピードは、膨大な空間データを短時間で再構成することを可能にする」と述べた。研究チームでは同ツールの有効性を、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がんなど複数のがん種で評価し、将来的に病理医の診断能力を強力にサポートするよう開発を進めている。
参照論文:
Inferring super-resolution tissue architecture by integrating spatial transcriptomics with histology
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乳がん早期発見のための新しい血液検査
米ワイルコーネル医科大学の研究チームは、乳がん早期発見のための新しい血液検査実証に関して、米国防総省乳がん研究プログラムから240万ドル(3.5億円)の助成金を受けたことを明らかにした。
研究者らは、乳がんに関連する血液中の特定のバイオマーカーを検出する実験的診断検査である「Syantra DX Breast Cancer」(Syantra Inc.)の臨床評価を行う。Syantra DX Breast Cancerは、AIアルゴリズムによる血液評価によって、マンモグラフィと同時期、あるいはそれ以前の症状自覚前に乳がん陽性を判定することができるというもの。米疾病予防管理センターによると、米国では毎年約24万人の女性が乳がんと診断され、約4.2万人が乳がんで死亡している。リキッドバイオプシーによる高精度で低侵襲な検査は、早期発見が要となる疾患において大きな力となる。
ワイルコーネル医科大学のSandra and Edward Meyer Cancer Centerでディレクターを務めるCristofanilli氏は、「我々は、女性が乳がん検診を受けやすくしたいと考えている。マンモグラフィは早期発見のために重要だが、乳腺密度が濃い女性や遺伝的素因を持つ若い女性にとっては必ずしも最適な検査ではない」と述べている。
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NEJMグループ – 「NEJM AI」を創刊
2024年、世界有数の医学誌を発行するNEJM(The New England Journal of Medicine)グループが、AI/機械学習を医療分野に応用することに特化した査読付き専門誌「NEJM AI」を新たに創刊する。この新誌は、フラッグシップ誌NEJMの厳格な査読基準を踏襲し、医療分野におけるAIツールの責任ある研究と開発を促進することを目的としている。
NEJM AIの初代編集長であるIsaac Kohane博士は、「医療分野におけるAIの進展と応用」をテーマにした論説で、この新誌が科学的知見の質の向上に寄与することを期待している。特筆すべき点として、NEJM AIが投稿論文に「大規模言語モデル(LLM)の使用を認める方針」を打ち出したことが挙げられる。この方針により、1.著者は内容に全責任を持ち、2.LLM使用を適切に明記すること、を前提としてLLMツールの使用が容認される。ただし、LLMを共著者として記載することはできない。NEJM AIはこの方針によって「LLMの使用による研究の質の向上と、科学的知識の創造と活用の民主化」を目指している。
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